パーソナリティ障害とは?看護の視点から見る関わり方と支援のポイントを解説
2025.03.31パーソナリティ障害とは?精神医学的な理解
パーソナリティ障害(人格障害)は、個人の思考・感情・行動パターンに著しい偏りがあり、その影響で社会的機能や人間関係に困難を生じやすい精神疾患の一種です。精神医学の分野では、診断と対応が非常に難しい疾患のひとつとされており、精神科においても慎重な看護が必要とされます。
この障害を持つ方の多くは「自分の感覚が正しい」と強く信じており、他者の視点を受け入れるのが困難です。そのため、看護師は専門的知識に基づいた対応が求められます。
パーソナリティ障害の種類と特徴
パーソナリティ障害は、一般的に以下の3群10種類に分類されます。これらは、精神療法や看護介入の方法に違いがあるため、診断と理解が極めて重要です。
A群(奇妙で風変わりなタイプ)
- 妄想型パーソナリティ障害
- シゾイドパーソナリティ障害
- 統合失調型パーソナリティ障害
B群(感情的で衝動的なタイプ)
- 反社会性パーソナリティ障害
- 境界性パーソナリティ障害(特に女性に多く、看護現場でも頻出)
- 演技性パーソナリティ障害
- 自己愛性パーソナリティ障害(自己評価が過剰または極端に低い)
C群(不安で内向的なタイプ)
- 回避性パーソナリティ障害
- 依存性パーソナリティ障害
- 強迫性パーソナリティ障害
これらの障害はそれぞれに独自の症状や行動パターンがあり、治療法や関わり方も異なります。境界性や自己愛性の場合、感情の起伏が激しく、看護師に対しても強い依存や怒り、不適切な言葉による反応が見られるケースがあります。
パーソナリティ障害に共通する症状と行動パターン
症状は個人差がありますが、以下のような傾向が見られることが多いです。
- 思考が極端で柔軟性に欠ける
- 他者との関係が不安定
- 感情のコントロールが難しい
- 一貫性のない行動や反応
- 他者に対する過度な期待や不信
このような症状があるため、精神科の看護現場では、ナースや医師、支援スタッフ間で対応方法を統一することが不可欠です。
看護の役割と目標設定の重要性
看護師が関わる際の基本的な目標は以下の4点に整理されます。
-
苦痛(不安・抑うつ・怒りなど)の軽減
- 本人の障害理解を深める
- 社会に不適切な行動の改善
-
パーソナリティ特性の調整と支援
これらを達成するために、看護師は精神療法(認知行動療法や対人関係療法など)への導入や、医師と連携した薬物治療のサポートも行います。
看護師が意識すべき関わり方のポイント
看護師や訪問看護スタッフがパーソナリティ障害の方と接する際に、特に留意すべき点は以下の通りです。
1. 明確な治療目標の共有
本人・家族・医療者が共通の認識を持っていないと、支援は困難になります。「自分は病気ではない」と認識している方も多いため、まずは現状の課題を理解してもらうことが重要です。
2. 一定の距離感を保つ
信頼関係を築く一方で、過度に親密になりすぎないよう配慮が必要です。行き過ぎた関与は、相手の感情を不安定にしやすく、「見捨てられた」と感じる引き金にもなりかねません。
3. 関わり方の統一
看護師・医師・スタッフが対応を統一し、「いつも同じ態度」で接することが大切です。関係性の中で安心感を持たせることで、行動の安定や社会的適応力の向上が期待できます。
訪問看護における対応と支援の実際
訪問看護は、パーソナリティ障害を持つ方にとって非常に有効な支援手段です。自宅という安定した環境でのケアは、感情の揺れを軽減することにもつながります。
訪問看護のメリット
- 安定した関係性の構築が可能
- 日常生活での困難を具体的に把握できる
- 医療との連携がスムーズ
- 家族の不安を軽減する支援も可能
患者本人だけでなく、家族や周囲の人々にも看護的支援を広げることで、社会的孤立やストレスの軽減にもつながります。
看護学や医学書・研究データから見る傾向
日本国内の看護学雑誌や医学書、臨床研究では、パーソナリティ障害を持つ方の対応における課題が多く報告されています。たとえば、スタッフの感情的巻き込まれや、症状への反応が強くなるケースでは、看護の中立性が損なわれやすいという傾向も指摘されています。
看護師は、自身の感情をコントロールしながら関わる「感情の自己管理」も求められます。
看護の現場で活かせる実践的アプローチ
看護師が現場で使える関わりの具体的方法は、以下のようなものがあります。
- 感情を受け止めつつも一線を引く「共感的距離」
- 状況に応じて、時間・サービスの提供を明確に制限
- 支援内容を記録・共有し、チームで評価・見直しを行う
また、利用者のレビューや事例を共有することで、現場全体の看護力を向上させることも可能です。
まとめ:パーソナリティ障害を理解し、看護で支援の質を高めよう
パーソナリティ障害を持つ方への看護には、専門知識と柔軟な対応力が求められます。症状や特性を理解し、的確な支援と関わりを行うことで、本人の生活の安定や社会復帰の可能性が高まります。
精神科や訪問看護の現場で働く看護師は、常に自らの対応を見直し、知識を更新していく姿勢が重要です。
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