「会社を休むことにはなったけれど、毎日家でどう過ごせばいいかわからない」 「ベッドで横になっていると、罪悪感と焦りで余計に苦しくなってしまう」
適応障害と診断され、いざ休職期間に入ったものの、「正しい休み方」がわからずに戸惑ってしまう方は非常に多くいらっしゃいます。真面目で責任感の強いあなたにとって、平日の昼間に「何もしない時間」を過ごすことは、まるで自分自身がダメな人間になってしまったかのような、強い恐怖や罪悪感を伴うかもしれません。
しかし、どうか安心してください。まずは、今この記事をここまで読んだだけで、もう十分立派です。自分の心と体に向き合おうとしている、とても大きな一歩を踏み出しています。「休むのが怖い」「なかなか休めない」と感じる自分自身さえも、今は許してあげていいのです。
この記事では、適応障害で休職中の正しい過ごし方を、回復のステージ別にわかりやすく解説します。一人暮らしでの家事の乗り越え方や、旅行・外出などの気になる疑問にもお答えします。「今は自分のペースで休んでいいんだな」と、少しでもご自身を安心させるためのヒントにしてみてください。
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休職中の過ごし方で一番大切なこと
休職期間中、過ごし方のベースとなる最も大切な考え方についてお話しします。
最初は「何もしないこと」があなたの仕事
休職の診断が出た直後、多くの方が「休んでいる間に資格の勉強をしよう」「溜まっていた家事を完璧にこなそう」と、何か生産的なことをしようと計画を立ててしまいます。 しかし、休職初期において最も大切なのは**「徹底的に何もしないこと」**です。
適応障害を発症しているとき、あなたの脳は過剰なストレスによってエネルギーが完全にすり減った状態、いわば「スマートフォンのバッテリーが切れた状態」です。ここで無理に活動しようとすると、充電ができないどころか、さらにバッテリーを劣化させてしまいます。 「ぼーっとする」「一日中眠る」ことは、決してサボりではありません。すり減った脳の神経を修復するための、立派な「治療(充電作業)」なのです。
罪悪感や焦りは回復を遅らせる原因に
「同僚は今頃忙しく働いているのに」「自分だけ休んでいて申し訳ない」という罪悪感は、交感神経(緊張の神経)を刺激し続け、心身の回復を大きく遅らせてしまいます。 焦りを感じてしまう自分を責める必要はありません。「あ、今また焦っているな」と気づいたら、「今は休むことが自分に与えられた唯一の仕事だ」と、何度でも優しく自分に言い聞かせてあげてくださいね。
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休職中の過ごし方と回復のステップ
適応障害の回復には、大きく分けて3つのステージがあります。ご自身の今の状態に合わせて、無理のない過ごし方を取り入れてみましょう。なお、このタイミング(休養期・回復期・復職準備期)は人によって前後してOKですし、戻ったり進んだりを繰り返しても大丈夫です。
1. 休養期(休職開始〜1ヶ月程度):徹底的に心身を休める
休職に入ってすぐのこの時期は、心身のエネルギーが最も枯渇している「急性期」です。
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過ごし方のポイント: 睡眠欲求の赴くままに、いくらでも眠って構いません。昼夜逆転してしまっても、この時期は「とにかく眠れる時に眠る」ことを優先しても大丈夫です。
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心がけ: 仕事のメールや連絡ツールは一切見ないようにすると良いでしょう。テレビの音やスマートフォンの光すら負担に感じることがあるため、情報を遮断して、外部からの刺激を最小限にすることが大切です。
2. 回復期(1〜3ヶ月目):生活リズムを少しずつ整える
少しずつ気力が戻り、「退屈だ」「外の空気を吸いたいな」と思える瞬間が出てきたら、回復期に入ったサインです。
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過ごし方のポイント: 決まった時間に起床し、夜は眠るという「規則正しい生活リズム」を少しずつ取り戻していきます。
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心がけ: 午前中にカーテンを開けて太陽の光を浴びる、近所を5分だけ散歩してみる、といった軽い活動から始めてみましょう。疲れたらすぐに横になって休むことが鉄則です。“できない日”があっても、それは大切な休息です。焦らず「できたこと」だけを褒めてあげてください。
3. 復職準備期(3ヶ月目以降):社会復帰へのリハビリ
体調が安定し、日中の活動を問題なくこなせるようになったら、復職(または再就職)を見据えたリハビリを始めます。
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過ごし方のポイント: 通勤時間に合わせて起きて外出する、図書館などで数時間読書や作業をして集中力を試すなど、仕事に近い負荷を少しずつかけていきます。
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心がけ: 専門の機関が行う「リワーク(復職支援)プログラム」に通い始めるのも有効です。主治医や会社の人事・産業医と面談を行い、無理のない復職プランを立てていきましょう。
休職中に「やってはいけない」NG行動
休職中、良かれと思ってやってしまう行動が、実は回復の妨げになることがあります。以下の行動には少しだけ注意してみてください。
SNSで同僚の活躍や他人の生活を見る
SNSを開くと、同僚の仕事の成果や、友人の楽しそうな日常が目に入ってきます。心が弱っているときにこれらを見ると、「自分は取り残されている」という強烈な焦燥感と自己嫌悪に襲われやすくなります。休職中は、意識的にSNSアプリを削除するか、通知を切るなどして距離を置くと良いでしょう。
転職や退職など「人生の大きな決断」をする
「今の会社に戻るのが怖いから、すぐに転職しよう」「退職してしまおう」と、休養期や回復期に大きな決断をするのは控えた方が安心です。 脳が疲労している状態では、物事をネガティブに捉えがちで、後悔する決断をしてしまうことがあります。人生に関わる重要な決断は、心身のエネルギーが十分に回復した「復職準備期」以降に、主治医と相談しながら行うようにしてください。
自己判断で通院や服薬をやめる
「少し元気になったから」「薬に頼りたくないから」と、自分の判断で通院や服薬をやめてしまうと、症状がぶり返し、結果的に休職期間が長引いてしまうことがあります。治療の終了は、必ず専門家である主治医に委ねましょう。
もし、ついSNSを見てしまったり、焦って無理な決断をしてしまいそうな時があっても、「やっちゃった…」と自分を責めず、気づいた時点でまた休息に戻れば大丈夫です。
休職中によくある疑問・悩み
ここでは、適応障害の休職中に当事者の方が抱えやすい「リアルな悩み」にお答えします。
Q. 趣味や旅行・外出をして遊んでもいいの?
A. 回復期以降で、主治医の許可があれば問題ありません。 「休職しているのに旅行や趣味を楽しむなんて、職場や周囲から“さぼり”と思われたらどうしよう」と心配になるかもしれません。しかし、適応障害において「自分が楽しいと思えることをして、心からリラックスする時間」は、脳の疲労を回復させるための立派な治療行動です。 心の健康を取り戻すプロセスは人それぞれです。周囲の目を気にして我慢するよりも、ありのままに回復を目指す方が、結果的に再就労もうまくいきます。体調に無理のない範囲であることを前提に、主治医に相談して楽しんでみてください。
Q. 一人暮らしで、家事や食事が全くできない時は?
A. 便利なサービスをフル活用し、家事のハードルを極限まで下げてください。 一人暮らしの場合、休職中は「自分の身の回りのこと」すらできなくなることがあります。そんな時は、「完璧にやらなければ」という思い込みを手放して大丈夫です。
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食事: 自炊は一切しなくて構いません。出前(デリバリー)や冷凍食品、レトルト食品、コンビニのお弁当に頼りましょう。栄養バランスより、何か食べるだけで十分合格点です。
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家事: 洗い物が出ないように紙皿や割り箸を使ったり、どうしてもつらい時は家事代行サービスを頼ったりするのも一つの手です。「“できなくても、今は治療期間だから大丈夫”と割り切って休めれば、それで十分です。
孤独でつらい時、通院が難しい時は訪問看護を
適応障害で休職し、一人で過ごす時間が長くなると、「このまま社会に戻れないのではないか」「誰とも話さず、孤独で押しつぶされそうだ」という強い不安に襲われることがあります。また、症状が重く、家から一歩も出られず、通院することすら困難になってしまう日もあるでしょう。
もし、そのような状態で苦しんでいるのなら、一人で耐え抜こうとせず、「精神科訪問看護」という外部のサポートを頼ることもできます。
精神科訪問看護とは、看護師や精神保健福祉士などの専門スタッフが、あなたのご自宅を定期的に訪問し、療養生活をサポートする医療サービスです。
「今日は何もできなくてずっと寝ていました」という日があっても大丈夫です。一番安心できるご自宅の環境で、お薬のサポートをしたり、誰にも言えない焦りや不安を専門的な視点で傾聴したりします。人と話すだけでも、心の重荷はスッと軽くなります。
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を訪問区域とし、精神疾患によって日常生活に困難を抱える方々に寄り添うステーションです。
「今は頼れそうにない」と思っても、自分を責めないでください。今日相談できなくても、次にまたこの記事を読んだ時でもOKです。あなた自身が“自分のペース”を少しずつ取り戻せるように、私たちが温かく伴走いたします。
まずは相談だけでも構いません。こちらのフォームからお気軽にご連絡ください。
参照:健康教育指導者講習会