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摂食障害(摂食症)は、回復することが可能な病気です。治療では、こころとからだの両面の問題を扱っていきます。
摂食障害は治るのか
摂食障害は、体重や食事、栄養だけの問題ではありません。そのため治療も、体重を増やすことだけを目標にはしません。治療の目標として挙げられるのは、食行動の改善、体重の増加、月経の回復、偏った考え方の改善や心理面の改善です。
治療を終える目安は、体重と月経が正常に戻り、体重や体形への病的なこだわりがなくなることです。女性の場合、体形へのこだわりが完全になくなることはまれです。そのこだわりが過剰かどうかが、治療を続けるか終えるかを考えるうえで、大きなポイントになります。
医師によっては、「治癒」ではなく「寛解」という言葉を使うことがあります。寛解は、症状が落ち着いている状態を指す言葉です。若い年齢で発症し、体調が回復したあとに再発しない人も、多くいます。
一方で、低栄養が進むほど治療は難しくなり、病気の期間も長くなる傾向があります。長い治療が必要になることもあるため、早い段階で相談することが大切です。
回復の道のりは、いつもまっすぐに進むとは限りません。調子を崩したり、気持ちが揺れたりしながら進むこともあります。
初診で行われること
初診では、まず問診で、食事や体重の経過、月経の状態、気分や睡眠、日常生活の様子などを確認します。体重や血圧の測定、身体の診察を行い、必要に応じて血液検査や心電図などで、低栄養や嘔吐が身体に与えている影響を調べます。
本人は、自分が病気とは思っていないことがあります。受診の時点では、本人が現在の状態に満足していて、太ることへの恐怖がはっきりしないこともあります。
摂食障害を専門に診る医療機関は限られています。専門外の科で長く治療を続け、入院が必要なほど低体重が進んでから受診に至るケースもあります。月経が止まって婦人科を受診した場合も、食事や体重の経過を医師に伝えることが大切です。気になる症状があれば、精神科・心療内科などに早めに相談してください。
治療の基本的な流れ
治療に含まれる内容は、一般的に次のような順で進みます。患者さんの症状や症状の重さ、別の病気の有無によって、組み合わせや順番は変わります。
はじめに、治療に向けての信頼関係、協力関係を作ります。摂食障害という病気の説明を受け、回復への動機づけや、治療についての説明を行います。患者さんには「健康になりたい」という思いと「体重が増えるのが怖い」という思いが、ともにあることが多くあります。医師は、健康になりたいという部分に働きかけながら、治療を進めます。
治療の間は、症状(摂食・行動・身体・心理・社会面)を記録し、モニターします。状態の変化を確認しながら進めるためです。
身体管理も並行して行います。身体の合併症があれば、その対処・治療をします。食事・栄養指導を行い、体重を回復する必要がある場合には再栄養療法を行います。あわせて、正常な食習慣を指導します。
心理療法では、食べ物や体重、体形に対する考え方やとらわれ方に取り組みます。他の精神疾患もともなっている場合は、その対処・治療も行います。補助的に、薬物療法を行うこともあります。
神経性やせ症(拒食症)では、治療や体重回復にためらいを覚える患者さんが多くいます。そのため、精神療法は特に重要とされています。
栄養の回復と身体管理
神経性やせ症の治療では、十分なカロリーと栄養素の確保が基本です。固形物を食べることが最善の治療法とされ、液体の栄養剤を使うこともあります。まれに、重度の低栄養がみられる患者さんや、食べることを拒む患者さんでは、鼻から胃まで管を入れて栄養を補給することがあります。
栄養士は、具体的な食事療法のプランや、正常体重の回復に必要なカロリーの情報を提供します。低栄養が続くと、骨の密度が低下することがあります。こうした併存する身体の問題にも、あわせて対応します。定期的な健診で、経過を確認します。
食事の量を戻していく過程は、身体の状態によっては負担がかかることがあります。自己判断で急に食事量を増やすのではなく、医療機関で身体の状態を確認しながら進めることが大切です。
外来で行う治療と入院になる場合
治療は通常は外来で行います。外来治療では体重の回復が難しい場合、著しい低体重や身体合併症がある場合、食事を全くとれない場合、精神的に不安定な場合などは、入院で治療することがあります。
神経性やせ症では、体重の減少が急速または重度の場合、体重を速やかに回復させることが極めて重要です。十分なカロリーと栄養素を確実に摂取するために、入院が必要になることがあります。
入院中は、精神医学的カウンセリングと栄養カウンセリングを受けます。入院は、普段の環境を離れ、問題のある食習慣や摂食行動を断ち切る助けにもなります。入院の目的は、身体の安全を確保し、栄養状態を整えることです。状態が安定したら、外来での治療に移り、通院しながら生活の中で回復を進めていきます。
ただし、ほとんどの患者さんは外来で治療を受けます。入院中の過ごし方や治療の内容は、医療機関によって異なります。
心理療法の種類
心理療法としては、一般的に専門家による支持的精神療法が行われます。患者さんの話を聞き、気持ちを支えながら、治療に向かう力を育てていく方法です。
より専門的な心理療法として、摂食障害に焦点化された認知行動療法があります。物事の受け止め方や捉え方を修正していく治療で、食事のパターンを整えることや、体重や体型へのとらわれを軽くすることを目標にします。強化型の認知行動療法(CBT-E)と呼ばれる治療も開発され、日本でも導入している医療機関があります。
対人関係療法は、患者さんが対人関係の問題を特定し、変化させることを支援する治療です。神経性やせ症の青年期の患者さんでは、家族療法が有用とされています。家族間の意思疎通が改善され、親は子どもの体重回復を助ける方法を学びます。
どの心理療法を受けられるかは、医療機関によって異なります。
タイプ別の治療の違い
摂食障害は、タイプによって治療の中心が異なります。
神経性やせ症(拒食症)
十分なカロリーと栄養素の確保、精神療法、定期的な健診が、治療の基本です。精神療法は、正常な食習慣の確立と正常体重の達成に重点を置きます。個人療法と家族療法があり、失った体重を取り戻した後も続けるのが一般的です。
神経性過食症(過食症)
通常は、認知行動療法が第一選択として用いられます。目標は、治療への動機づけ、規則的で柔軟な食事のパターンの確立と維持、体重や体型へのとらわれの軽減です。個人またはグループで、精神療法家と会って進めます。
認知行動療法ができない場合の別の選択肢として、対人関係療法があります。
過食性障害(むちゃ食い症)
治療の目標は、患者さん自身がむちゃ食いを抑えられるようになることです。認知行動療法は、長期的なむちゃ食いの抑制に有効です。対人関係療法も、認知行動療法と同程度にむちゃ食いへの効果があります。
薬物療法の位置づけ
摂食障害の治療では、補助的に薬物療法を行うことがあります。薬だけで治療を行うのは難しいという見方が一般的で、精神療法や栄養の回復と組み合わせて進めます。
神経性やせ症を直接の治療対象とする薬はありません。他の精神疾患に使われる一部の薬が、体重増加に役立つことがあります。
神経性過食症では、抗うつ薬の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が使われます。理想的には精神療法と併用して、むちゃ食いと嘔吐の頻度を減らします。不安や抑うつの治療にも有効です。長期的にどの程度有効かは不明です。
過食性障害では、SSRIや精神刺激薬が、むちゃ食いを短期間止めるのに役立つことがあります。
家族ができること
家族やケア提供者の摂食障害に対する理解と協力があると、治療を進めやすくなります。そのため、家族への説明や支援も行われます。
家族が体を気遣って口にする「食べなさい」「食べたら?」という言葉が、患者さんにとって大きなプレッシャーになることがあります。摂食障害は、食べるか食べないか、食欲があるかないかだけで解決できる問題ではありません。食事の進め方は医療者に任せ、責めたり、無理に食べさせようとしたりしないことが、治療への協力になります。体形や体重について、評価する言葉をかけないことも大切です。
家族の関わり方は、患者さんの年齢や治療の方針によって異なります。具体的な関わり方は、主治医に相談しながら決めていきます。家族だけで抱え込まず、医療機関の相談を利用してください。
自分だけで治そうとするときの注意点
摂食障害は、体重や食事の問題だけでなく、考え方やとらわれ方、身体への影響が関わる病気です。自己流の食事制限や、食事量の急な変更、嘔吐や下剤の使用を続けることは、身体への負担を大きくすることがあります。
「体重が増えるのが怖い」という気持ちを抱えながら、治療を考える人は少なくありません。その気持ちを含めて、医療者に話すことができます。専門家のサポートを受けながら進めるほうが、身体の状態を確認しながら、無理なく回復を進められます。
受診を考える目安
摂食障害は、影響が大きく、長くならないうちに、サインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談して治療を受けることが大切です。精神科・心療内科などの専門の医療機関への相談を検討してください。
食事や体重のことで日常生活に支障が出ている場合や、周囲の人が心配している場合は、相談の目安になります。
まずは相談だけでも構いません。こちらからお気軽にご連絡ください。