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「退院できた。でも、これからどう生活すればいいのかわからない」「家に戻ってから再びお酒に手が伸びてしまわないか不安」。アルコール依存症の入院治療を終えてご自宅に戻る際、退院前よりも強い不安や怖さを感じるのは、ごく自然な反応です。ご家族にとっても、「退院直後からどう接すればいいのか」と戸惑ったり、これまでの経緯から時にイライラを感じてしまったりするのは、無理のないことと言えます。
この記事では、退院後の不安を抱えるご本人・ご家族に向けて、これからの生活で何が大切か、どんなサポートがあるかを詳しくお伝えします。うまくいかないことがあっても、やり直し(トライ&エラー)を重ねていくためのヒントとしてお役立てください。
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退院後が回復の「本番」である理由
アルコール依存症の治療において、入院期間は身体からアルコールを抜き、心身を休ませるための重要なステップです。しかし、退院してご自宅に戻ってからが、回復に向けた「本番」の始まりであると言われます。
入院中は、お酒が手に入らないよう管理された環境にあり、医師や看護師が常にそばにいます。しかし退院後は、コンビニやスーパーに行けばすぐにお酒が目に入り、日常のストレスや人間関係の悩みに再び直面することになります。お酒を飲まない生活を「自分の意思とご自宅の環境」で維持していかなければならないため、退院後に再びお酒を飲んでしまうケースは少なくありません。
だからこそ、退院直後はご本人もご家族も「うまくいかなくて当然」の時期であることを知っておく必要があります。最初からすべてを完璧にこなそうとするのではなく、小さな失敗とやり直しを繰り返しながら、専門機関のサポートを巻き込んで生活の土台を作っていくことが重要となります。
退院後の生活で大切な3つのこと
退院後、お酒に頼らない生活を続けていくためには、いくつかの柱となる取り組みがあります。日常生活で意識しておきたい3つのポイントについて解説します。
通院を継続する
退院後も、専門医療機関への定期的な通院を続けることが基本となります。通院は、現在の身体の健康状態や精神的な安定度を医師に確認してもらう大切な機会です。
退院直後は体調が良いと感じても、生活を続ける中で不眠や気分の落ち込み、あるいは強い飲酒欲求が現れることがあります。「もう通院しなくても平気だ」と自己判断して通院をやめてしまうことは、再飲酒のリスクを高める要因になりやすいため、医師の診察を定期的に受ける習慣を保つことが大切です。
自助グループとつながる
アルコール依存症からの回復において、同じ病気を抱える仲間とのつながりは非常に大きな意味を持ちます。断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)などの自助グループに参加することは、退院後の生活を支える重要な柱の一つとされています。
「自分はまだ行きづらい」「どうやって参加すればいいかわからない」とハードルを感じる場合は、ご家族が代理で問い合わせを行ったり、見学から始めたりすることも一つの方法です。同じ経験を持つ仲間と体験を語り合うことで、孤立感を和らげ、お酒を飲まない生活を継続するモチベーションの維持につながります。
自宅での生活環境を整える
お酒を遠ざけるためには、ご自宅の環境づくりも欠かせません。家の中にあるお酒は処分し、目に触れないようにしておくことや、飲み会などの誘いをどう断るか、あらかじめ対策を考えておくことが望ましいとされています。
ただし、環境整備を一度にすべて完璧に行う必要はありません。ご本人だけで抱え込むのではなく、ご家族でできる範囲の工夫を分担したり、支援者と一緒に考えたりしながら、少しずつ「お酒から距離を置ける環境」を整えていくことが大切です。
退院後に訪問看護を使う理由
退院後の生活を支えるために、通院や自助グループに加えて、「精神科訪問看護」を利用するという選択肢があります。通院はご本人が病院へ出向く形ですが、ご自宅での日常生活の中には、それだけでは補いきれないさまざまな困りごとが生じることがあります。
精神科訪問看護は、看護師などの専門スタッフがご自宅へお伺いし、生活の場に直接介入してサポートを行うサービスです。具体的にどのような支援を受けられるのかを解説します。
服薬管理と体調確認
退院後には、抗酒薬や飲酒欲求を抑える薬が処方されることがあります。しかし、日常生活の中で薬の飲み忘れが生じたり、お酒を飲みたい気持ちから意図的に薬を飲まなくなったりすることがあります。
訪問スタッフは、ご自宅で以下のようなサポートを行います。
- 処方された薬が指示通りに飲めているかの確認
- 飲み忘れを防ぐための具体的な工夫の提案
- 睡眠状態や気分の波、身体的な不調がないかの観察
うまくいかない日があっても、どうすれば続けられるかを一緒に考え、必要に応じて主治医へ報告を行います。
生活リズムの立て直し
ご自宅での生活に戻ると、起床や就寝の時間が不規則になり、食事のバランスが崩れてしまうことがあります。生活リズムの乱れは、心身のストレスとなり、飲酒欲求を引き起こす要因になる場合があります。
訪問看護では、ご自宅での過ごし方をお聞きし、ご本人のペースに合わせて無理なく生活リズムを整えるためのアドバイスを行います。最初から規則正しい生活を求めるのではなく、小さな目標(決まった時間に起きるなど)から始め、トライ&エラーを重ねながら安定した療養生活の基盤を作っていきます。
再飲酒したときの対応と気持ちの立て直し
もし退院後にお酒を飲んでしまった場合、ご本人は強い自己嫌悪に苛まれ、周囲に隠そうとしてしまうことがあります。
精神科訪問看護において、再飲酒は「失敗」ではなく、サポートを見直すための「リスタート(再出発)の合図」と捉えます。定期的にご自宅を訪問するスタッフに対し、早い段階で「実は飲んでしまった」と相談することが、事態の悪化を防ぐことにつながります。なぜ飲んでしまったのか、次に同じような状況になったときにどう対処すればよいのかを一緒に考え、気持ちを立て直すためのサポートを行います。
家族へのサポート
退院後、ご家族は「また飲んでしまうのではないか」という不安を抱えながら、緊張した毎日を過ごされることが多くあります。ご家族が疲弊してしまわないよう、以下のような支援を行います。
- ご家族の不安や悩みを傾聴する相談窓口としての役割
- ご本人への接し方や、適切な距離感の取り方に関するアドバイス
- 医療機関や地域の支援機関との連携調整
「このような対応でよかったのか」と迷うことや、ただ話を聞いてほしいというご相談だけでも構いません。ご家族が孤立せずに支援者とつながっていることは、結果としてご本人の回復を支えることにつながります。
再飲酒してしまったらどうする?
退院後、お酒を飲まない生活を続けていく中で、再びお酒を飲んでしまうことは、回復の過程で起こり得ることです。しかし、再飲酒したまま放置してしまうと、症状が以前より悪化してしまうリスクがあるため、早めの対応が求められます。
もしご本人がお酒を飲んでしまったときは、ご本人を責めたり、ご家族だけで問題を抱え込んだりするのではなく、専門家にすぐに相談することが大切です。再飲酒の直後こそ、今の支援体制を見直し、新たな対策を取り入れるための切り替えのタイミングとなります。
お酒を飲んでしまったことで「すべてが終わった」と悲観するのではなく、「また支援につながり直すこと」が大切です。何度やり直しても構いません。一人で抱え込まず、主治医や訪問看護スタッフに現状を伝え、今後の対応について相談することが、再び回復の軌道に乗るための一歩となります。
費用と使える制度
精神科訪問看護などの支援を利用するにあたり、費用の負担について心配される方もいらっしゃるかもしれません。精神科訪問看護を利用する場合、基本的には公的な健康保険などの医療保険が適用されます。
さらに、アルコール依存症などの精神疾患を理由として継続的な通院やケアが必要な場合、「自立支援医療(精神通院医療)」という制度の対象となる場合があります。この制度を利用して手続きを行うことで、医療費の自己負担が軽減される仕組みが設けられています。
制度の利用や手続きについてご不明な点がある場合は、詳しくはご相談ください。最初からすべての情報を整理していなくても問題ありません。
利用開始までの流れ
退院後の生活支援として精神科訪問看護の利用を検討される場合、どのような手順で進むのかをご説明します。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう 現在通院している、あるいは退院後に通院する予定の医療機関の主治医に、「自宅での生活に不安があるため、訪問看護を利用したい」とご相談ください。医師が訪問看護の必要性を判断した場合、訪問看護ステーション宛てに「精神科訪問看護指示書」が発行されます。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討している訪問看護ステーションに電話やメールで連絡をとります。ご本人からでもご家族が代理で問い合わせても構いません。「まずは話だけ聞いてみたい」といった段階からのお問い合わせも可能です。
- 面談・契約 訪問看護ステーションのスタッフがご自宅等で面談を行います。現在の状況やご希望のサポート内容についてお聞きし、サービスの内容や料金の仕組みについて説明が行われます。契約前に説明だけを聞くことも可能であり、内容にご納得いただいたうえで契約を取り交わします。
- 訪問開始 契約後、医師の指示書や事前の話し合いに基づいた計画に沿って、スタッフが定期的にご自宅への訪問を開始します。利用途中でサポート内容を見直したり、お休みしたりすることも可能です。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして、精神疾患を抱える方のための訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには、精神科看護の分野で専門的な知識と経験を持つ精神科認定看護師が在籍しております。アルコール依存症の退院後の生活への不安や、再飲酒を防ぐための日常的な取り組みについて、ご本人やご家族の状況に合わせたサポートを一緒に考えていきます。
大切なのは、ご本人やご家族だけで抱え込まず、プロを巻き込みながら「何度でも支援に戻る」という姿勢です。焦らず、ご自身のペースで取り組んでいくことが大切です。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にこちらからご連絡ください。
参照:MSDマニュアル