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「お酒を飲むと人が変わったように怒鳴り散らす」「暴言や暴力が怖くて、家の中で常にびくびくしてしまっている」。ご家庭の飲酒問題に直面し、今まさにどう対応すればよいのかと調べている方に向けて、この記事では、飲酒中の暴言や暴力がなぜ起こるのか、ご家族が身を守るためにどのような対応が考えられるのかを詳しく解説します。
アルコールに関連する家庭内の問題は、ご家族だけで解決することが非常に困難とされています。対応の基本的な考え方を知り、一人で隠したり抱え込んだりせず、専門機関への相談という選択肢を知るための参考にしてみてください。
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なぜ飲酒中に暴言・暴力が起きるのか
普段は温厚であったり、大人しかったりする人が、お酒を飲んだ途端に暴言を吐いたり、暴力を振るったりするようになると、ご家族は「自分の接し方が悪いのだろうか」と悩むことが多くあります。しかし、こうした行動の変化は、アルコールという物質が脳に与える影響や、病気の症状の一側面であると捉えられています。
アルコールが体内に入ると、脳の理性を司る前頭葉という部分の働きが低下するとされています。前頭葉は、感情をコントロールしたり、衝動的な行動を抑えたりする「ブレーキ」のような役割を果たしています。このブレーキがアルコールの影響で外れてしまうと、普段は抑え込んでいる不満やストレス、怒りといった感情がむき出しになりやすく、結果として暴言や暴力という形で表に出やすくなると言われています。
つまり、飲酒中の暴言や暴力は、本人の元々の性格が根本から悪くなったというよりも、アルコール依存症というコントロールの障害がもたらす症状の一つとして表れている可能性があります。このことを知っておくだけでも、ご家族がご自身を過剰に責める状況から少し距離を置くための手がかりとなります。
暴言・暴力への対応で「やってはいけないこと」
アルコールの影響下にあるご家族に対して、良かれと思ってとった行動が、かえって事態を悪化させたり、問題を長引かせたりすることがあります。対応するうえで避けたほうがよいとされる行動とその理由について解説します。
飲酒中の本人と正面から言い争わない
ご本人がお酒を飲んで酔っている状態のときに、「またお酒を飲んで」と説教をしたり、暴言に対して正面から反論したりすることは、避けることが望ましいとされています。
アルコールが入って脳の抑制機能が低下している状態では、論理的な会話や冷静な話し合いはほとんど成立しません。ご家族からの正論や反論は、ご本人にとって「攻撃された」と受け取られやすく、相手を刺激して暴言や暴力がさらにエスカレートする引き金になる可能性が高くなります。酔っているときは相手にせず、刺激しないことが基本的な対応と考えられています。
かばいすぎない(イネイブリングについて)
ご本人がお酒を飲んで問題を起こしたときに、ご家族がその尻拭いをしてしまう行動を「イネイブリング(助長行為)」と呼びます。お酒を飲んで暴れて壊したものを家族が黙って片付ける、二日酔いで会社に行けないときに家族が「風邪を引いた」と嘘の電話をして休ませる、といった行動が当てはまります。
ご家族としてはトラブルを大きくしたくないという思いからの対応であることがほとんどです。しかし、ご家族が後始末をしてしまうことで、ご本人は「お酒を飲んで問題を起こしてもなんとかなる」と学習してしまいます。結果として、ご本人が自分自身の飲酒問題の深刻さに直面し、反省したり治療の必要性を感じたりする機会を奪ってしまうとされています。
一人で抱え込まない
家庭内で起きている暴言や暴力の問題は、恥ずかしさや「周囲に知られたくない」という思いから、外部に助けを求めず隠してしまいがちです。
しかし、アルコール依存症の問題をご家庭の努力だけでコントロールすることは非常に困難であるとされています。一人で抱え込んでいると、ご家族自身が心身ともに疲弊してしまいます。また、日常的な暴言や暴力のある環境は、同居している子どもにも強い不安を与え、心理的な影響が及ぶ可能性があります。誰にも言わずにご家庭の中だけで耐え続けることは、避けるべき状況の一つと考えられています。
暴言・暴力があるとき、家族が身を守るために
飲酒に伴う暴言や暴力が起きた際、何よりも最優先で考えるべきは、ご家族ご自身と子どもの安全を確保することです。ご本人の飲酒を止めようと無理に立ち向かうのではなく、身を守るための行動を取ることが重要とされています。
ご本人が荒れ始めたら、同じ部屋に留まらず、物理的な距離を取ることが推奨されます。別の部屋に移動して鍵をかける、あるいは状況によっては家から外へ避難することも選択肢となります。あらかじめ「危険を感じたらこの部屋に逃げる」「実家や友人の家に一時的に避難する」といった計画をご家庭内で考えておくことも、安全確保のための有効な手段とされています。
また、暴力がエスカレートしている、あるいは身の危険を感じるような場合には、警察へ通報することや、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などの行政機関へ相談することも選択肢の一つです。外部の機関を介入させることはためらうかもしれませんが、深刻な事態を防ぐための身の安全確保が常に優先されます。
本人の治療につなげるために家族ができること
ご本人の飲酒問題の改善や治療に向けて、ご家族が日常生活の中で意識できる関わり方について解説します。
まず、お酒について話をする場合は、必ず「シラフのとき(お酒を飲んでいない、落ち着いているタイミング)」を選ぶことが重要とされています。その際、相手を責めるのではなく、主語を「私」にして感情を伝える「I(アイ)メッセージ」という方法が有効な場合があると言われています。 例えば、「(あなたが)どうしてこんなに飲むの!」と責めるのではなく、「お酒を飲んでいるとき、(私は)とても不安になります」と伝える形です。
また、先述した「イネイブリング(尻拭い)」を少しずつ減らしていくことも大切です。お酒を飲んで床で寝てしまったら布団には運ばないなど、ご本人に自分の行動の結果を背負ってもらう経験をさせることが、治療の必要性に気づくきっかけになるとされています。
そして、ご家族自身が先に専門家へ相談することが重要です。ご本人が病院に行くことを拒否している場合でも、ご家族が地域の保健所、精神保健福祉センター、あるいは精神科訪問看護などに相談することができます。ご家族が正しい知識を得てサポートを受けることが、結果的にご本人が治療へと向かう環境作りに寄与する場合があります。
精神科訪問看護にできること
精神科訪問看護は、ご本人へのケアだけでなく、ご家族への支援も重要な役割として担っています。ご家族が相談するだけでも利用を開始できる場合があり、ご家庭の状況に合わせたサポートを提供します。
家族の話を聞く相談窓口としての役割
毎日のように暴言や暴力の不安にさらされ、誰にも相談できない状況は、ご家族の心を深く傷つけます。訪問看護スタッフは、ご家庭を訪問し、ご家族が抱えている恐怖や不安、日々の苦労を丁寧にお聞きする相談窓口としての役割も担っています。第三者である専門スタッフに現状を話し、気持ちを整理するだけでも、ご家族の精神的な負担を和らげることにつながります。
本人への関わり方・距離感のアドバイス
アルコール依存症の知識を持ったスタッフが、日常生活での具体的な関わり方についてアドバイスを行います。例えば、暴言が始まったときにどのように距離を取ればよいか、イネイブリングをどうやって減らしていけばよいかなど、ご家庭ごとの事情に合わせた対応方法を一緒に考えます。うまくいかないことがあっても、やり直しながら対応を検討していくことが可能です。ご家族だけで迷うのではなく、専門家と相談しながら方針を決めていくことができます。
医療機関・支援機関との連携
ご家庭内の状況が深刻な場合や、子どもへの影響が懸念される場合など、訪問看護ステーションだけで抱え込まず、適切な機関と連携を図ります。状況に応じて主治医に報告を行ったり、保健所や行政の相談窓口、福祉サービス、場合によっては安全を確保するための機関との橋渡しを行う場合があります。地域全体の支援ネットワークの中でサポートを受けられるよう調整につなげることができる場合があります。
利用開始までの流れ
精神科訪問看護を利用してみたいと考えた場合、どのような手順で進むのかをご説明します。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう 現在、ご本人が精神科や心療内科に通院している場合は、主治医に訪問看護を利用したい旨を相談します。医師が必要と判断した場合、訪問看護ステーション宛てに「精神科訪問看護指示書」が発行されます。ご本人が通院を拒否しており医療機関につながっていない場合は、ご家族が保健所や精神保健福祉センターへ相談することが、支援を利用するための最初の入口となることがあります。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討している訪問看護ステーションに電話やメールで連絡をとります。ご家庭の現状や、ご家族が困っていることなどをお伝えください。まずは相談だけ、見学だけといったお問い合わせも可能です。
- 面談・契約 訪問看護ステーションのスタッフがご家族(可能であればご本人も)と面談を行います。どのようなサポートを希望されているかをヒアリングし、サービスの内容や料金の仕組みについて説明が行われます。内容にご納得いただいたうえで、契約を取り交わします。
- 訪問開始 契約後、医師の指示書や事前の話し合いに基づいた計画に沿って、スタッフが定期的にご自宅への訪問を開始し、サポートを行います。利用の途中で少しお休みすることや、対応を見直することも可能です。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして、精神科領域に特化した訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには、精神科看護について専門的な知識と経験を持つ精神科認定看護師が在籍しております。アルコール依存症の療養に関わる問題は、ご家庭だけで解決することが非常に困難です。ご家庭内での暴言や不安に対して、どのように対応し、安全を確保していくかを、専門スタッフがご家族と一緒に考えていきます。
一人で抱え込まず、まずは話してみることから始めてみてください。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にこちらからご連絡ください。
参照:MSDマニュアル