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「もう疲れた」「どう接していいかわからない」と、心の中でつぶやいたことはありませんか。
双極性障害を抱えるご家族を支える毎日は、決して平坦なものではありません。良くなったと思えばまた波が訪れ、その度に振り回されてしまう現実に、限界を感じてしまうのは当然のことです。
この記事では、双極性障害の家族が抱える独特の疲れの理由や、限界を感じたときにとるべき行動、状態別の接し方について解説します。あなたが自分自身を責めず、少しでも心を休めるためのヒントになれば幸いです。
※本記事はご家族の負担を軽くするための一般的な情報です。症状が重い、対応に危険を感じるなど緊急性が高い場合は、主治医や地域の相談窓口に早めに連絡してください。
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疲れてしまうのは、あなたが真剣に支えてきた証拠
双極性障害の家族が抱える独特の疲れとは
双極性障害(躁うつ病)は、気分が高揚する「躁状態」と、落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。この気分の波は、ご本人にとって非常につらいものですが、一番近くで生活を共にしているご家族にとっても、大きな負担となります。
常に相手の顔色をうかがい、症状の変化に一喜一憂し、時にはご本人の言動のフォローに追われる日々。それは、一般的な看病や介護とは異なる、精神的にも肉体的にも深く消耗する「独特の疲れ」を伴います。
「自分が弱いから疲れた」ではない
「家族なのだから、私が支えなければ」「これくらいで疲れたと言ってはいけない」と、ご自身を責めていませんか。
しかし、疲労を感じるのは、あなたがご家族を見捨てず、真剣に病気と向き合い、一生懸命に支えてきた証拠です。決してあなたが弱いからでも、愛情が足りないからでもありません。 まずは、「私は疲れているんだ」「よく頑張ってきたんだ」と、ご自身の感情を認め、受け入れてあげてください。ご家族がご自身の心身を守ることは、結果的にご本人を長く支えるためにも非常に大切なことです。
双極性障害の家族が疲れやすい理由
躁状態・うつ状態の波に振り回される
双極性障害の最も大きな特徴である「気分の波」は、ご家族を強く疲弊させる原因の一つです。
昨日までは元気で活動的だったのに、今日はベッドから起き上がることすらできない。あるいは、ずっと落ち込んでいたのに、急に大きな買い物をしてきたり、夜通し話し続けたりする。 こうした極端な状態の変化に合わせて、ご家族も接し方や生活のペースを変えざるを得ず、常に気を張っている状態が続きます。いつ波が来るのか予測できないことも、慢性的なストレスに繋がります。こうした緊張が続くと、ご家族自身の睡眠(寝)や生活リズムの乱れにつながり、疲れが抜けにくくなることもあります。
「昨日と違う人みたい」という戸惑い
症状が強く出ているときは、ご本人の性格や人柄がすっかり変わってしまったように見えることがあります。
普段は穏やかな人が、躁状態のときには怒りっぽくなったり、他者に対して攻撃的な態度をとったりすることがあります。逆にうつ状態のときには、何を言っても反応が薄く、まるで別人のようになってしまうこともあります。 「本来のこの人はどこへ行ってしまったのだろう」という戸惑いや悲しみは、ご家族の心に重くのしかかります。
イライラや暴言を向けられることの消耗
躁状態や、躁とうつが混ざり合った「混合状態」のときには、ご本人がイライラしやすくなり、最も身近な存在であるご家族に対して暴言を吐いたり、理不尽な要求をしたりすることがあります。
病気の症状だと頭では理解しようとしても、心ない言葉を直接浴びせられ続けると、心は深く傷つきます。反論すれば火に油を注ぐことになり、ただ黙って耐えるしかない状況は、ご家族から気力を奪っていきます。
終わりの見えない不安
双極性障害は、適切な治療を続けることで、症状を安定させながら生活できるようになるケースも多い病気です。しかし、治療には時間がかかり、良くなったり悪くなったりを繰り返すことも珍しくありません。
「この生活がいつまで続くのだろうか」「一生、私が面倒を見なければならないのだろうか」という、将来に対する漠然とした、しかし終わりの見えない不安は、ご家族を精神的に追い詰める大きな要因となります。
疲れたときに家族がとるべき行動
まず「距離をとること」を許可する
限界を感じたら、まずは物理的・心理的にご本人と距離をとることを自分自身に許可してください。
「私がいないとダメになるのでは」と心配になるかもしれませんが、ご家族が倒れてしまっては元も子もありません。別の部屋で過ごす時間を作る、数時間でも外出して一人の時間を持つ、可能であれば数日間、他のご家族の家やホテルなどで離れて過ごすなど、休息の時間を確保することが最優先です。
自分の感情を誰かに話す
つらい気持ちやネガティブな感情を、自分一人で抱え込まないでください。「疲れた」「逃げ出したい」といった感情を持つことは、ごく自然なことです。
信頼できる友人や親戚などに話を聞いてもらうだけでも、心の負担は軽くなることがあります。ただし、双極性障害という病気は、経験したことのない人には理解されにくい側面もあるため、話す相手は選ぶ必要があるかもしれません。
家族会・自助グループを活用する
同じように精神疾患を抱えるご家族を持つ人たちが集まる「家族会」や「自助グループ」は、非常に強力な心のよりどころとなります。
同じ立場の人の経験や考え方に触れることで、「自分一人ではない」と感じられることがあります。また、具体的な対処法や地域の医療・福祉情報など、役立つ情報を得られる場でもあります。
専門機関に相談する
ご家族だけで抱えきれない問題は、専門家の力を借りてください。
精神保健福祉センターや保健所などの公的機関には、精神保健福祉士などの専門職が配置されており、無料で相談に乗ってくれます。ご本人の治療のことだけでなく、ご家族自身のつらさや生活の困りごとについても、具体的なアドバイスや適切な支援サービスを提案してくれます。相談先に迷う場合は、精神保健福祉センター・保健所のほか、自治体の相談窓口や主治医のいる医療機関に「家族として相談したい」と伝えてみてください。
状態別・家族の接し方ガイド
躁状態のときの接し方
躁状態のときは、本人は気分が良く、病気であるという自覚(病識)が乏しくなりがちです。活動的になりすぎたり、次々と新しいアイデアを思いついたりしますが、それに巻き込まれすぎないことが大切です。
ご家族はできるだけ穏やかに、一定のトーンで接するように心がけてください。本人の言動を頭ごなしに否定したり、強く説教したりすると、反発を招きやすくなります。金銭的なトラブルや危険な行動が予測される場合は、主治医に早めに相談し、必要に応じて環境を調整することが重要です。
うつ状態のときの接し方
うつ状態のときは、本人は強い疲労感や絶望感を抱えています。無理に励ましたり、「頑張れ」とプレッシャーをかけたりするのは避けましょう。
「何かあったら手伝うからね」と、見守っている姿勢を伝えるにとどめ、本人が安心して休める環境を整えることが最優先です。食事や入浴などができなくなっている場合は、できる範囲でサポートしつつ、焦らずに回復を待つ姿勢が求められます。また、自殺をほのめかすような言動があった場合は、決して放置せず、すぐに主治医や専門機関に連絡してください。
再発のサインに気づいたとき
双極性障害は、再発を繰り返すことが多い病気です。しかし、本格的に症状が悪化する前には、何らかの「サイン」が現れることが少なくありません。
厚生労働省も指摘しているように、「いつもと違う」「やり過ぎ」といったサインを見逃さないことが大切です。例えば、「睡眠時間が急に減ったのに元気だ」「いつもより口数が多い」「ちょっとしたことで怒りっぽくなった」といった、普段と違う様子が見られたら要注意です。ご家族はこうしたサインに一番気づきやすい存在です。気にかかる変化があったら、様子を見すぎず、早めに主治医などに相談し、医療と連携して対応することが再発予防の鍵となります。
参照:こころの耳
家族も支援を受けていい
訪問看護は本人だけでなく家族の相談窓口にもなれる
双極性障害の治療と生活を支えるための頼もしい味方として、「精神科訪問看護」があります。
訪問看護は、看護師などの専門スタッフがご自宅を訪問し、ご本人の服薬管理や体調観察、生活リズムを整えるサポートを行う医療サービスです。 そして重要なのは、訪問看護はご本人だけでなく、ご家族のための相談窓口にもなるということです。ご自宅というリラックスした環境で、「最近、こんなことで困っている」「私の接し方はこれでいいのだろうか」と、日々の不安や悩みを専門スタッフに相談することができます。
第三者である医療職が定期的に関わることで、ご家族の心理的な負担が軽減されることがあります。もう限界かもしれない、誰かに話を聞いてほしいと感じたら、どうか一人で抱え込まずに専門家を頼ってください。
精神科訪問看護ステーション ラララでは、双極性障害を抱えるご本人と、そのご家族が穏やかな生活を取り戻せるよう、専門的な知識と温かい心でサポートいたします。「どうすればいいかわからない」「まずは話だけでも聞いてほしい」といったご相談でも構いません。あなたとご家族の生活を支えるために、一緒に考え、歩んでいきます。お気軽にこちらのご相談フォームからご相談ください。