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「躁状態のときは行動が止められないし、うつ状態のときはなんと声をかければいいか分からない」「どう接するのが正解なのか分からず、自分自身も疲れてきてしまった」――双極性障害を抱える身近な人と関わる中で、そういった戸惑いや悩みを抱えながら日々を過ごされている方もいらっしゃるかもしれません。
完璧な接し方や答えを見つけられずに悩むのは、決して不自然なことではありません。この記事では、双極性障害という病気の特徴をはじめ、気分の波が激しい躁状態とうつ状態、それぞれの場面に応じた具体的な接し方のポイントについて解説します。接し方にただ一つの正解があるわけではなく、状況に合わせて対応を見直していくことが一つの過程となります。情報を調べ、対応を見直そうとしている今の段階が、状況を改善する一歩になり得ます。ご自身や周囲の状況を客観的に見つめ直し、一人で抱え込まずに専門機関のサポートを活用するための参考としてご一読ください。
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双極性障害の特徴を理解する
双極性障害の方への適切な接し方を考える上で、まずはこの病気の特徴について基本的な理解をしておくことが大切です。双極性障害は、気分が異常に高揚して活動的になる「躁状態(または軽躁状態)」と、気分が著しく落ち込んで無気力になる「うつ状態」を繰り返す病気であるとされています。
この病気は、気分の波が激しく入れ替わるイメージを持たれがちですが、実際には生涯を通じた経過の中で、躁状態よりも「うつ状態」の期間が長くを占めるとされています。ご本人は長いうつ状態を苦しみながら過ごし、そこから一転して躁状態になると「調子が良くなった」「病気が治った」と錯覚してしまうことがあり、これが周囲との認識のズレを生む要因になる場合があります。
また、周囲の方に理解していただきたいのは、これらの極端な気分の変動やそれに伴う言動は、本人の性格や意志の問題、あるいは家族の対応が悪いことによるものではないという点です。脳の働きや神経伝達のバランスが関係する病気であるという前提に立つことが、適切な接し方を考えるための第一歩とされています。
躁状態のときの接し方
躁状態の時は、エネルギーが過剰に高まり、眠らなくても活発に行動し続ける、次々と新しいアイデアが浮かぶ、気が大きくなるといった特徴が見られるとされています。判断力が低下し、衝動的な行動が増える傾向があるため、周囲がそのペースに巻き込まれやすく、対応に疲弊してしまうことが少なくありません。
否定も肯定もせず中立的に接する
躁状態のご本人は、自信に満ち溢れ、自身の考えがすべて正しいと感じている場合があります。そのため、周囲が「それはおかしい」「間違っている」と頭ごなしに否定すると、激しい怒りや反発を招く可能性があります。一方で、無理に話を合わせて過度に肯定することも、ご本人の行動をエスカレートさせてしまう要因になり得るとされています。
大きな決断・契約を一緒に止める関わり方
判断力が低下している躁状態の期間には、突然仕事を辞めようとしたり、大きな契約を結んだり、必要のない高額な買い物を衝動的にしてしまったりする場合があります。こうした取り返しのつかない事態を防ぐためには、周囲が「今は重要な決断をする時期ではないから、少し待とう」と伝え、時間を置くように促す関わり方が求められています。ご本人が聞く耳を持たないことも多いため、必要に応じて主治医などの専門家に間に入ってもらうことも一つの方法です。
刺激を与えすぎないこと
躁状態の時は、脳が常に興奮している状態であると考えられています。そのため、周囲が一緒になって感情的に言い争ったり、長時間の会話に付き合ったりすると、かえってご本人の興奮を長引かせてしまう場合があります。落ち着いた環境を保ち、適度な距離を置きながら、ご本人に過剰な刺激を与えないよう静かに見守る姿勢が大切とされています。
うつ状態のときの接し方
うつ状態の時は、気力が著しく低下し、一日中動けなくなる、何に対しても興味が湧かなくなる、自分を深く責めるといった特徴が現れるとされています。躁状態の時とは全く異なる姿になるため、周囲はどう声をかけてよいか迷うことが多いようです。
話を聴く・励まさない
うつ状態のご本人は、強い自責の念や不安を抱えている場合があります。「頑張って」「元気を出して」といった励ましの言葉は、ご本人にとって「これ以上どう頑張ればいいのか」という強いプレッシャーになる可能性があるため、避けるのが望ましいとされています。ご本人が何かを話そうとした時には意見を挟ずに聴き、もし言葉が出ない時は「話したくない時は無理に話さなくてもいいよ」と、何もしないことを肯定する姿勢が安心感につながるとされています。
本人のペースを尊重する
エネルギーが枯渇しているうつ状態の時期には、身の回りのことすら手につかなくなる場合があります。それを「怠けている」と捉えるのではない、病気による症状として受け止め、本人の回復のペースを尊重することが大切です。無理に行動を促したり、気分転換に連れ出したりすることは、かえって負担を大きくする可能性があるため、脳と身体を休ませる期間として見守ることが推奨されています。
深刻なサインに気づいたら
うつ状態が深まると、将来に対する希望を完全に失い、ご本人が自らの命を終わらせることをほのめかすような言葉を口にする場合があります。もしそういった深刻なサインが見られた場合には、決して「気のせいだ」「そんなことを言ってはいけない」と流したりせず、事態を真摯に受け止めることが重要とされています。ご家族だけで抱え込まず、速やかに主治医や医療機関、あるいは地域の保健所などの専門機関へ相談を促す対応が求められています。
再発の兆候に気づくために
双極性障害は、治療を続けていても気分の波が再び現れる「再発」を繰り返しやすい病気であるとされています。そのため、躁状態やうつ状態の再発の兆候に、周囲が早めに気づくことが重要とされています。
再発の早期サインとして特に注意が必要とされているのが「睡眠の変化」です。睡眠時間が極端に短くなっても平気で活動している場合は躁状態の始まり、逆にいくら寝ても眠気が取れなかったり、夜眠れなくなったりする場合はうつ状態の始まりのサインであるとされています。ほかにも、言葉遣いや金銭感覚の変化など、ご家庭ごとに見られる特有のサインがあります。 すべてを完璧に観察する必要はありません。少しでも「いつもと違う」と感じたら、分からないままの状態で専門家に相談することが、症状の悪化を防ぐための手段とされています。
家族が一人で抱え込まないために
双極性障害は、症状の波と長く付き合っていく必要がある病気です。病気に関するすべての責任を家族が一人で担うことには限界があります。家族自身が疲労を感じるのは自然なことであり、対応に迷いや失敗があったとしても、何度でも支援を見直してやり直す選択肢があります。
家族自身が心身のバランスを崩さないためには、適度に外部のサポートに頼ることが非常に重要であるとされています。地域の精神保健福祉センターや保健所では、精神疾患に関する専門的な相談窓口が設けられています。また、同じ立場の人が集まる「家族会」などに参加し、悩みを共有することも一つの選択肢です。入り口は「ただ話を聞いてほしい」「どうすればいいか分からない」といった相談だけでも、状況を整理する第一歩になり得ます。
そして、より具体的な日常生活のサポートとして、「精神科訪問看護」を活用することも一つの方法です。
精神科訪問看護にできること
精神科訪問看護を利用することで、双極性障害を抱えるご本人と、そのご家族に対して、以下のサポートを提供します。
本人への継続的なサポート
看護師などの専門スタッフが定期的にご自宅を訪問し、ご本人の体調や気分の波の確認を行います。双極性障害の治療において重要な服薬が適切に続けられているかを確認し、睡眠時間や食事といった生活リズムを整えるための助言を行います。定期的な訪問により、再発兆候の早期発見につながる場合があります。
家族への相談対応
訪問看護は、サポートを行うご家族への支援も大切な役割として位置づけています。ご本人への日々の接し方に関する悩みをお聞きし、状況に応じた具体的な対応の工夫について情報提供を行います。「日々の疲れを聞いてほしい」といったご家族からの相談にも対応し、精神的なサポートを行います。
主治医・支援機関との連携
ご自宅でのご本人の様子や、気分の変動などの小さなサインを、主治医である医師に適切に報告します。また、必要に応じて地域の支援機関とも連携を図りながら、包括的な支援体制を整えるための役割を担います。
費用と使える制度
精神科訪問看護を利用する際の費用については、基本的には各種医療保険が適用されます。 また、継続的な精神科通院が必要な方を対象とした「自立支援医療(精神通院医療)」という公的制度の適用を合わせて受けた場合、医療費や訪問看護の利用料金に対する自己負担額が軽減される場合があります。
細かい制度の仕組みや準備が整っていなくても、一緒に整理していくことが一つの方法です。詳しくはご相談ください。
利用開始までの流れ
精神科訪問看護を利用し始めるまでの一般的な流れは、以下のような手順で進めていきます。最初からすべての手順を把握していなくても、窓口で確認しながら進めていくことが一つの方法です。途中で利用をお休みしたり、後から再開したりすることも選択肢の一つです。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう 訪問看護を利用するためには、現在通院している医療機関の医師による「精神科訪問看護指示書」が必要となります。まずは主治医へ、生活のサポートとして訪問看護を利用したい旨をご相談ください。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討しているステーションへ連絡を入れ、現在の状況を伝えます。ご本人からだけでなく、ご家族やパートナーの方からの問い合わせも可能です。
- 面談・契約 訪問看護のスタッフが事前面談を行い、サポートの内容や訪問頻度、費用などについて説明を行います。内容に納得いただいた段階で、利用のための契約を結びます。
- 訪問開始 主治医からの指示書の内容と、面談で確認した計画に基づいて、実際の自宅訪問サービスが開始されます。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには精神科認定看護師が在籍しており、精神疾患を抱えながら地域で生活を送る方々や、そのサポートを行いながら日々悩みを抱えるご家族を支えるための療養生活支援を行っています。すべてを自分たちだけで完璧に解決しようとする必要はありません。何度でも支援を見直し、仕切り直すための選択肢として、ご検討いただければと思います。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
参照:こころの耳