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摂食障害(摂食症)の原因は、ひとつに特定されていません。複数の要因が重なって起こる病気と考えられています。
摂食障害の原因は一つに決まらない
摂食障害は、ひとつの原因で発症するものではありません。社会・文化的な要因、心理的な要因、生物学的な要因が重なって起こる、多因子の病気と考えられています。持って生まれた素因と、環境を含めたさまざまな要因が複雑に重なって発症する、という説明もされています。
原因を考えるときは、3つに分けると整理しやすくなります。ひとつめは、その人のなりやすさにつながる要因で、体質や性格の傾向などが含まれます。ふたつめは、発症のきっかけになる要因で、ダイエットや強いストレスなどが挙げられます。みっつめは、いったん始まった症状を続かせてしまう要因です。この3つは別々に働くのではなく、重なり合って影響します。
なぜ発症する人としない人がいるのかは、明らかになっていません。同じようにダイエットをしても、発症するのは一部の人です。
神経性やせ症(拒食症)の原因は、不明とされています。女性であることを除けば、危険因子はほとんど特定されていません。
遺伝や体質との関係
研究では、神経性やせ症には遺伝的素因があることが分かっています。神経性過食症(過食症)も、遺伝的な要因と社会的な要因の影響を受けます。
ただし、遺伝子の解析が国内外で行われてきましたが、原因の解明にはまだ至っていません。特定の遺伝子だけで起こる病気ではありません。遺伝的な素因があるからといって、必ず発症するわけではありません。
性格や心理的な傾向
発症しやすい人の特徴として、几帳面で強迫的な面があり、成績や成功に対して非常に高い基準を持つことが挙げられています。ただし、これらの特徴が原因と断定されているわけではありません。
背景には、不適切な自己評価や、対人関係をめぐる葛藤、心理社会的なストレスが潜んでいると考えられています。自分の価値を体重や体形で測ってしまうことも、摂食障害の特徴のひとつです。
こうした傾向があるからといって、性格に問題があるわけではありません。
不安や強迫、うつなどの精神症状や、別の精神障害をともなうこともあります。どちらが先に生じるのか、原因なのか併存しているのかは、一概には言えません。
社会・文化的な背景
多くの社会で、やせたいという願望がみられ、肥満は魅力的でないとみなされることがあります。神経性過食症は、やせていることを理想とする文化で多く起こります。現代の日本でも、やせたいという願望を持つ10代から20代の若い女性が多いとされています。
メディアや社会的なプレッシャーも、要因のひとつと考えられています。ただし、発症にどの程度影響しているかを示すデータは、現時点ではありません。
体形や体重を強調する活動を行う人では、神経性やせ症や神経性過食症が起こる割合が高くなるとされています。体形や体重を日常的に意識せざるを得ない環境が、影響すると考えられます。
ダイエットとの関係
ダイエットをきっかけに発症することが多くみられます。特に神経性やせ症では、そうした経過をたどる人が多いとされています。体重が減ることで達成感や周囲の反応を得て、さらに食事を減らすようになる人もいます。
ただし、ダイエットをするすべての人が発症するわけではありません。体重をコントロールしている人のうち、神経性やせ症を発症するのはごくわずかです。ダイエットの経験があっても発症しない人がほとんどのため、ダイエットをしたことが本人の責任というわけではありません。
発症のきっかけになりうる出来事
ダイエット以外にも、受験の失敗や進学後の成績低下など、自信を失う出来事(挫折体験)や、強いストレスがきっかけになることがあります。
進学、就職、転居、人間関係の変化など、環境が変わる時期に調子を崩しやすくなることもあります。体形や体重についての周囲の何気ない言葉が、きっかけとして語られることもあります。
きっかけが本人にもはっきりしないことがあります。きっかけがはっきりしなくても、それぞれの患者さんの症状や症状の重さ、別の病気の有無、背景の問題などを多面的に評価して、それに応じた治療が進められます。
症状が続いてしまう悪循環
低栄養が続くと、身体だけでなく、抑うつやイライラなど、心にも悪影響が及びます。食べ物のことが頭から離れなくなる、集中しにくくなるといった変化も起こります。こうした変化が、食事への不安や極端な食行動をさらに強めます。
神経性過食症では、食事を制限した反動で、大量に食べてしまうことがあります。食べたあとに強い罪悪感や自己嫌悪が生じ、体重が増える不安から嘔吐などの行動をとったり、次の食事を減らしたりします。この繰り返しが、症状を続かせます。
いったんこの悪循環に入ると、きっかけとなった出来事がなくなっても、症状が続くことがあります。原因やきっかけを探すだけでなく、いま続いている症状に治療で対応することが大切です。
家族の育て方は原因なのか
親の育て方や家族の関わりが主な原因で、摂食障害が起こるとは考えられていません。国際的な摂食障害の学会は、家族の要因が発症の唯一の、あるいは主な仕組みだとする考えを否定しています。「親が原因で摂食障害になる」という考えを支持する証拠はない、としています。家族の影響を調べた研究には、方法上の限界があることも指摘されています。
ご家族が「育て方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまうことがありますが、そのように考える根拠は、現在のところ示されていません。
家族は、原因としてではなく、回復を支える存在として治療に関わります。若い患者さんの治療には、家族が関わることが推奨されています。
摂食障害のよくある誤解
「治らない」「本人がなりたくてなっている」「若い女性の病気である」といった誤解は、患者さんや家族を傷つけ、治療や支援の妨げになるおそれがあります。
摂食障害は、適切な治療によって回復することが可能な病気です。
摂食障害は、本人の意志やわがままで起こる病気ではありません。食べ方を自分ではコントロールできなくなる病気です。
摂食障害は、10代から20代の若者がかかることが多い病気ですが、年齢、性別、社会的、文化的背景を問わず、誰でもかかりうる病気です。
受診を考える目安
摂食障害は、影響が大きく、長くならないうちに、サインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談して治療を受けることが大切です。精神科・心療内科などの専門の医療機関への相談を検討してください。
食事や体重のことで日常生活に支障が出ている場合や、周囲の人が心配している場合は、相談の目安になります。
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