起立性調節障害(OD)の症状が長引く中で、うつ病の症状が重なって見られることがあるとされています。身体の不調と心の不調が同時に存在する状態は、本人にとっても保護者にとっても、対応の難しさを感じやすいものです。この記事では、両方が重なったときに起こりやすい状態と、保護者としての関わり方を整理します。
起立性調節障害とうつ病が重なって見られることがある
身体の不調が長引くことが心理面に影響する場合がある
起立性調節障害は、自律神経の不調により朝の起床困難や立ちくらみ、倦怠感といった身体症状が現れる疾患とされています。この状態が長く続くと、学校に行けないことや、これまで通りに活動できないことへの強いストレスが蓄積していきます。
また、起立性調節障害の症状は午後になると回復しやすいという特徴があるため、周囲から「怠けている」「サボっている」と誤解を受けやすい側面があります。このような周囲からの心ない言葉や、理解されないことへの孤立感が持続的な心理的負荷となり、結果として気分の落ち込みや意欲の低下といった、うつ病の症状を引き起こす引き金になる場合があると考えられています。身体の不調が長引くことで、二次的に心の不調が重なってしまうケースは少なくないと考えられています。
見分けるよりも、今ある状態に向き合うことが大切
起立性調節障害による強い倦怠感や気力の低下と、うつ病による抑うつ気分や意欲の低下は、外見からは非常に似ている部分があります。そのため、「今はどちらの病気のせいで動けないのか」と、二つの病気を明確に見分けようとして悩んでしまう保護者の方も少なくありません。
しかし、家庭内でこれらを厳密に区別することは難しく、見分けることに意識を向けすぎると、かえって保護者自身の焦りにつながる場合があります。まずは病気の種類を分類するよりも、「今は身体も心もエネルギーが不足し、休息を必要としている状態である」と、目の前にあるつらさをそのまま受け止め、向き合う姿勢を持つことが大切とされています。
両方が重なるとき、本人に起こりやすいこと
「治らないかもしれない」という焦りと無力感
起立性調節障害による身体的なつらさに、うつ病による心理的なつらさが加わると、子どもは深い焦りと無力感を抱えるようになると考えられています。「学校に行きたいのに行けない」「友達に遅れをとってしまう」という焦りが常にある一方で、心身が思うように動かない現実に対し、「このままずっと治らないのではないか」という強い絶望感を感じやすくなります。
うつ病の症状が重なると、物事を否定的に捉えやすくなる傾向があります。そのため、少しでも体調が悪い日が続くと、「自分はだめな人間だ」「もうどうにもならない」と自らを激しく責め、回復への希望を見失ってしまう場合があります。
身体がつらいのに気力もない、という二重の苦しさ
起立性調節障害単独の場合、午後になって身体の調子が上向けば、趣味の時間を楽しんだり、友人との連絡をとったりする気力が湧いてくることが一般的とされています。しかし、うつ病が併発している場合、身体の調子が比較的良い時間帯であっても、「何もしたくない」「何をやっても楽しくない」といった意欲の低下が続くことがあります。
身体を起こすことがつらいという身体的な苦痛と、何もする気が起きないという精神的な苦痛が重なることで、本人は二重の苦しさを強いられることになります。これは単なる気分の波ではなく、心身のエネルギーが著しく枯渇している状態の現れであると考えられています。
保護者にできる関わり方
怒らず、焦らず、見守る
二つの困難が重なっている状態のとき、保護者にできる最も大切なサポートは、「怒らず、焦らず、見守る」ことだとされています。昼夜逆転の生活になったり、一日中部屋にこもったりする姿を見ると、つい「少しは起きて活動しなさい」と厳しい言葉をかけたくなるかもしれません。
しかし、他者との比較や、「なぜできないの」といった原因追及、あるいは根性論による叱責は本人の自己否定感をさらに強め、心理的な負荷を増大させる要因となる場合があります。子ども自身が一番もどかしく、焦っているということを理解し、「今いちばんつらいのはどこ?」と状態を確認して共感する姿勢を示すことが、回復のための重要な土台となると考えられています。
「治す」より「今を支える」という視点を持つ
「早く学校に行けるように治さなければ」という目標に強くこだわりすぎると、日々の体調の波に一喜一憂し、保護者自身が疲弊してしまいます。うつ病や起立性調節障害の回復は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進んでいくのが一般的とされています。
そのため、「治す」ことに焦点を当てるのではなく、「今日一日をどう穏やかに過ごすか」という視点へ切り替えることが大切です。「今は休むことも回復のために必要な時間である」と捉え、本人が家庭内で安心感を持てるような声かけや環境づくりを心がけることが、結果的に心身の回復を支えることにつながると考えられています。無理のない範囲で、午前中は休んで午後から少しだけ課題に触れるか、あるいは保健室を利用するかなど、本人が選べる選択肢を提案していくことも有効とされています。
医療機関と継続的につながる
身体と心の不調が複雑に絡み合っている状態をご家庭の中だけで支え続けることは非常に困難です。起立性調節障害を診てもらっている小児科などの主治医に、気分の落ち込みや意欲の低下といった心理的な変化についても正確に伝え、継続的に医療機関と連携することが重要とされています。
必要に応じて、児童精神科や心療内科など、心のケアを専門とする医療機関のサポートを取り入れることも選択肢となります。また、学校に対しても現在の体調や精神的な状態を共有し、遅刻や短時間での登校、保健室や別室の利用、課題の分割など、柔軟な配慮をご相談されることが推奨されます。専門家の客観的な視点を仰ぎながら、家庭と学校、医療機関が連携して本人を支える体制を整えることが大切とされています。
保護者自身の心も守ること
子どものつらい状態を間近で見守り続けることは、保護者にとって計り知れないストレスと疲労を伴います。「自分の育て方が悪かったのではないか」と、ご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。
しかし、保護者が心身のバランスを崩してしまうと、子どもを安定して支え続けることが難しくなる場合があります。子どもを支えるためには、まず保護者自身が休息をとり、リフレッシュする時間を持つことが大切です。ご家族だけで悩みを抱え込まず、医療機関の相談窓口やスクールカウンセラーなど、第三者に不安を打ち明けられる場所を持つことが非常に重要です。
訪問看護ステーション ラララへのご相談
起立性調節障害とうつ病が重なり合った複雑な状況において、ご家庭でどのように子どもと向き合い、生活を支えていけばよいのか、戸惑いや不安を抱えるのは自然なことです。
このような困難な状況の中で、決して一人で抱え込まずに相談できる場所があります。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
参照:こころの耳(厚生労働省)/OD(起立性調節障害)になった娘 参照:こころの情報サイト/うつ病