![]()
「どう声をかければいいかわからない」「良かれと思った言葉が逆効果になってしまった」――統合失調症の家族や身近な人と関わる中で、日々のコミュニケーションや接し方に戸惑いを覚えるのは自然なことです。
この記事では、統合失調症という病気への基本的な理解をはじめ、具体的な場面における適切な接し方のポイントや、避けたほうがよい対応について解説します。接し方に正解はなく、戸惑いや後悔があっても何度でもやり直すことが可能です。情報を調べ、対応を見直しようとしている今の段階が、状況を改善するための第一歩となり得ます。一人で抱え込まず、外部のサポートを活用するための参考としてご一読ください。
統合失調症の症状を理解する
統合失調症の方への接し方を考える上で、まずは病気とその症状について基本的な理解をしておくことが大切です。統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」と「陰性症状」の二つに分けられるとされています。
陽性症状とは、本来はないはずのものがあるように感じられる症状のことです。実在しない声が聞こえる「幻聴」や「幻覚」、現実ではないことを強く信じ込んでしまう「妄想」、考えがまとまらずにとりとめのない言言をしてしまうといった状態が挙げられます。
一方の陰性症状は、感情表現の減少や、意欲の低下、他者とのコミュニケーションを避ける、自発的な行動が少なくなるなどの様子が見られるとされています。
これらの症状は本人の意思でコントロールできるものではなく、本人やご家族の「頑張りが足りないから」起こるわけではありません。病気の特性によるものであるという前提に立つことが、適切な接し方の第一歩になると考えられています。
接し方の基本姿勢
統合失調症を抱える方と接する際には、いくつか心がけておきたい基本姿勢があります。完璧な対応を目指す必要はありません。
否定も肯定もしない
幻覚や妄想の内容を訴えられたとき、「そんなものは存在しない」と頭ごなしに否定することは避けるのが望ましいとされています。一方で、「私も聞こえる」と無理に話を合わせて過度に肯定することも、症状を助長する可能性があるため控えたほうがよいと言われています。「あなたにはそう聞こえる(見える)のですね」と、本人の体験自体は受け止める姿勢が推奨されます。
本人のペースを尊重する
回復には時間がかかることが多く、その過程も一進一退を繰り返すのが一般的とされています。「早く元気になってほしい」と回復を急かしたり、周囲の人と比較したりすることは、ご本人にとって大きなプレッシャーになる場合があります。焦らずに見守る姿勢が求められます。
穏やかで安定した環境をつくる
周囲の人が感情的になり、言い合いや対立が増えると、本人のこころに強いストレスがかかり、症状の悪化につながる場合があります。できる限り静かで落ち着いた環境を整え、穏やかなトーンで話しかけることが、本人の安心感につながると考えられています。
家族自身も無理をしない
病気からの回復には長期的なサポートが必要となる場合が多いため、家族やパートナーがすべてを背負い、無理を重ねることは避けるべきとされています。「今日は対応を休む」「専門家に相談を任せる」といった選択も、大切なサポートの一環です。
やってはいけない言葉・対応
接し方の中で、本人の症状や精神状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意すべき言動があります。
妄想や幻覚に対して「気のせいだ」「おかしいのではないか」といった言葉で強く否定することは、本人との信頼関係を損なう原因になるとされています。また、「もっとしっかりして」といった強い叱責やプレッシャーをかける言葉も、症状の悪化につながる場合があります。
さらに、「いつになったら良くなるのか」と回復を急かすことも避けたほうがよいと考えられています。そして、家族の判断で服薬を強制的にやめさせようとすることは、再発のリスクが高まる場合があるとされています。
もしこのような対応をしてしまった場合でも、自分を責める必要はありません。うまく対応できなかった時は、そこからまた接し方を見直し、第三者の助けを借りながら何度でもやり直すことが可能です。
関連記事:統合失調症の迷惑行為はなぜ起こる?困ったときの対処法と相談先
場面別の接し方
ここでは、具体的な症状や場面に応じた、望ましいとされる接し方について解説します。対応に迷った時は、いつでも専門家に助けを求めてよいということを念頭に置いておいてください。
幻聴・幻覚がある場合
ご本人が実在しない声や物音を訴えている場合、「私には聞こえないけれど、怖い思いをしているんだね」と、ご本人の感情に寄り添う姿勢が大切です。内容が分からなくても、「どうしていいか分からないけれど、あなたが困っていることは分かるよ」と伝えるだけでも、安心感につながるとされています。
妄想がある場合
「誰かに狙われている」といった妄想を訴える場合、その内容の正誤について理詰めで議論することは避けることが推奨されます。内容を正そうとするのではない、「そう感じていて不安なんですね」「心配しなくてもここは安全ですよ」と、本人が感じている恐怖心に焦点を当てて声をかけることが有効であると考えられています。
無気力・意欲低下がある場合
陰性症状により一日中横になっている場合、それは怠けているのではなく、病気によるエネルギーの低下が原因であるとされています。このような時期は、無理に行動を促して焦らせるのではなく、脳と身体を休ませるための時間と捉えることが大切です。たとえ小さなことであっても、何か行動があればそれを認めてあげることが大事です。
服薬・通院を嫌がる場合
服薬や通院を嫌がる場合、無理やり強制することは関係を悪化させる可能性があります。無理強いは避け、主治医や訪問看護のスタッフなど、専門家に状況を相談し、対応方法を一緒に考えていくことも一つの有効な選択肢になります。
家族が一人で抱え込まないために
サポートを家族やパートナーだけで長期間続けることは、心身ともに大きな負担を伴います。専門家への相談や外部支援の活用は、「他人任せ」ではなく「家族自身のケア」として非常に重要なプロセスです。
「何に困っているかうまく説明できない」という状態であっても、相談窓口を利用することに問題はありません。地域の保健所や精神保健福祉センターでは、精神疾患に関する専門的な相談を受け付けています。また、同じ境遇の家族が集まる「家族会」は、「ただ話を聞くだけ」の参加が可能です。
さらに、「精神科訪問看護」を活用することで、日々の具体的な接し方について一緒に考える専門家をサポートに加えることが可能です。
関連記事:統合失調症の家族に疲れたと感じたら ストレスの原因と家族を守る対処法
関連記事:統合失調症の家族を「見捨てたい」と感じるのは薄情?限界を感じたときの選択肢
精神科訪問看護にできること
精神科訪問看護を利用することで、ご本人とご家族に対して以下のようなサポートを提供できる場合があります。
本人への継続的なサポート
専門のスタッフが定期的にご自宅を訪問し、利用者であるご本人の体調確認や、服薬のサポートを行います。安定した生活リズムを取り戻すための助言を行い、地域での生活を継続できるよう支援します。
家族への相談対応
訪問看護は、ご家族へのサポートも重要な役割として位置づけています。ご本人への接し方に関する悩みをお聞きし、情報提供やアドバイスを行う場合があります。「日々の疲れや不安を聞いてほしい」といったご相談にも対応し、ご家族が孤立を防ぐための支援も行っています。
主治医・支援機関との連携
ご自宅でのご本人の様子や症状の変化を、主治医である医師に適切に報告します。また、地域の支援機関とも連携を図りながら支援を進めます。
費用と使える制度
精神科訪問看護を利用する際の費用については、基本的には医療保険が適用されます。 また、継続的な精神科通院が必要な方を対象とした「自立支援医療(精神通院医療)」という制度の適用を受けた場合、自己負担額が軽減される場合があります。
詳しくはご相談ください。
関連記事:統合失調症と訪問看護|受けられる支援内容・家族の負担軽減・利用方法をわかりやすく解説
利用開始までの流れ
精神科訪問看護を利用し始めるまでの一般的な流れは、以下のような手順で進めていきます。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう 訪問看護の利用には、医師からの指示書が必要となります。まずは現在通院している医療機関の主治医にご相談ください。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討しているステーションに連絡を取り、現在の状況を伝えます。ご本人からだけでなく、ご家族からの問い合わせも可能です。
- 面談・契約 スタッフと事前面談を行い、サービスの内容や費用について説明を受け、契約を取り交わします。
- 訪問開始 医師の指示書と計画に基づいて、ご自宅への訪問が開始されます。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには精神科認定看護師が在籍しており、精神疾患を抱える方々や、サポートを行うご家族が、地域で生活を続けていくための支援を行っています。完璧な対応を目指す必要はありません。ご家族自身も休息を取り、外部を頼ることを選択肢の一つとして、思い出していただければと思います。
精神科訪問看護ステーション ラララでは、皆様の疑問や不安に丁寧にお答えします。まずは相談だけでも構いません。こちらからお問い合わせください。
参照:厚生労働省「統合失調症」