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「病院には通っているけれど、自宅での生活が不安定なままになっている」「本人が治療を拒否していて、家族だけが疲弊している」。アルコール依存症の治療において、病院の診察室から一歩外に出た「日常の生活」の中でどう過ごすかは、ご本人にとってもご家族にとっても非常に難しい課題となることがあります。「このままだと家族が共倒れになってしまう」と不安を抱えながら、毎日を過ごされている方もいらっしゃるかもしれません。
ご自宅での生活やご家族の対応に限界を感じているとき、専門家がご自宅までお伺いする「精神科訪問看護」という選択肢があります。この記事では、アルコール依存症の療養において具体的にどのようなサポートが受けられるのか、そして利用を始めるまでの流れや費用について詳しく解説します。ご本人やご家族が少しでも安心して日常を送るためのヒントとしてお役立てください。
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アルコール依存症でも訪問看護は利用できる?
アルコール依存症の治療や日々の生活にあたって、「自分たちのような状態でも訪問看護は利用できるのだろうか」とためらわれる方は少なくありません。しかし、アルコール依存症は精神疾患の一つとして位置づけられており、精神科訪問看護の対象となります。
多くの方が「症状がとても重症でなければ使えないのではないか」「すでに入院しているような状態でなければ対象にならないのではないか」といった誤解を持たれていることがあります。実際には、そのようなことはありません。外来通院を続けながらご自宅で生活している方であっても、日々の生活の中でお酒との距離の取り方に悩んでいたり、ご家族が毎日の対応に困り果てていたりする場合、症状の重さに関係なく早めに相談していただくことが可能です。
利用を開始するためには、現在通院されている主治医から「訪問看護指示書」という書類を発行してもらう必要があります。「今の自分たちで利用を申し出てもよいのだろうか」と迷われている場合でも、まずは主治医に現状の生活の難しさやご家族が抱えている負担について、率直にお話ししてみることから始めてみてください。ご家族だけからのご相談からスタートする事例も多くあります。
訪問看護でできること
精神科訪問看護では、看護師などの専門スタッフがご自宅へお伺いし、アルコール依存症を抱えるご本人とご家族の生活を支えるための様々なケアを提供します。具体的にどのような関わりやサポートを行うのか、5つのポイントに分けて紹介します。
断酒・節酒に向けた生活環境の整備
アルコール依存症の療養において、お酒を飲まない生活(断酒)や、医師と約束した範囲での生活(節酒)を続けることは、ご本人の意思の力だけで達成するのは非常に困難な場合があります。
訪問スタッフは、ご本人がお酒に手を出してしまいそうになるきっかけを一緒に振り返り、どのようにお酒から距離を置くかをご本人やご家族と一緒に考えます。ここでのポイントは、「一度の成功を求めないこと」です。途中で飲酒してしまっても、それは失敗ではなく回復の過程でよくあることです。試行錯誤を繰り返しながら、何度でもやり直せるように無理のない範囲で生活環境を整えるアドバイスを行います。
服薬管理と体調の確認
アルコール依存症の治療では、お酒を飲めなくする抗酒薬や、飲酒欲求を抑える薬などが処方されることがあります。しかし、お酒を飲みたい気持ちが強くなると、自己判断で服薬をやめてしまうことが少なくありません。訪問スタッフは、処方された薬が指示通りに飲めているかを一緒に確認し、飲み忘れを防ぐための工夫を提案します。
また、長期間の飲酒によって肝臓などの身体機能に影響が出ている場合や、お酒を控えることで手の震えや不眠などの離脱症状が見られる場合があります。訪問時には血圧測定などの体調確認を丁寧に行い、心身の変化にいち早く気づき、適切な医療的対応につなげるためのサポートを行います。
本人との信頼関係を築く関わり
「お酒をやめなければいけない」と頭ではわかっていても、不安やストレスからつい飲んでしまい、ご本人は強い孤独や罪悪感を感じていることがあります。
訪問スタッフは、ご本人を頭ごなしに否定したり、飲酒を責めたりするのではなく、なぜお酒が必要になってしまうのかという背景にある思いに耳を傾けます。定期的な訪問を通じて対話を重ねることで信頼関係を築き、「失敗しても、また次を一緒に考えてくれる味方だ」と感じていただけるような関わりを目指します。
家族へのサポート
アルコール依存症は、ご家族を巻き込み、疲弊させてしまうことが多い疾患です。訪問スタッフは、ご本人のケアだけでなく、ご家族の思いをお聞きする相談相手としての役割も担います。具体的には以下のようなアドバイスを一緒に考えていきます。
- 飲酒してしまったときの具体的な対応の工夫
- ご家族が自分を責めずに、しっかり休息をとるための許可出し
- ご本人の問題の肩代わり(イネイブリング)を防ぐための、程よい距離感の見つけ方
ご家族が日々の生活で抱える深い疲労を、誰かに話すだけでも状況は変わります。ご家族の心身の健康を守ることも、大切な訪問看護の目的の一つです。
医療機関・支援機関との連携
ご自宅での療養を安定させるためには、様々な機関が協力し合う体制が大切です。訪問看護スタッフは、ご自宅での様子やご本人の体調の変化、ご家族の負担の状況などを、主治医へ適切に報告し連携を図ります。
また、状況やご希望に応じて、地域の保健所や精神保健福祉センター、あるいはアルコール依存症の方々が集まる自助グループなど、他の支援機関との橋渡しを行うこともあります。ご本人とご家族が地域の中で孤立しないよう、医療と福祉のネットワークをつなぐ役割を担います。
「本人が拒否している」場合はどうする?
アルコール依存症の難しい側面の一つに、ご本人が病気であることを認めたがらなかったり、治療や支援を受けることを強く拒否したりするケースが多いという点が挙げられます。
ご本人が訪問看護を嫌がる場合、「本人が同意しないから利用できない」とご家族が諦めてしまうことがありますが、ご家族だけが先に医療機関や訪問看護ステーションに相談するという方法をとることも可能です。これは決して珍しいことではなく、標準的な第一歩です。
ご本人が拒否している状態であっても、ご家族が専門家とつながりを持つことで、事態が少しずつ良い方向へ向かう手がかりを見つけられる場合があります。ご本人の気持ちを尊重しつつ、どのようなタイミングで声をかければ支援を受け入れてもらいやすくなるのか、一緒に考えることができます。「やってみてうまくいかなければ、また別の方法を探す」というように、焦らず少しずつ進めていくことが可能です。ご家族が一人で悩み続ける状況から抜け出すためのサポートを行います。
費用と使える制度
訪問看護を利用する際、費用の負担がどのくらいになるのかは気がかりな点かと思います。精神科訪問看護を利用する場合、基本的には公的な健康保険などの医療保険が適用されるため、全額を自己負担する必要はありません。
さらに、アルコール依存症などの精神疾患を理由として継続的な通院やケアが必要な場合、「自立支援医療(精神通院医療)」という制度を利用できる場合があります。この制度を利用して登録を行うことで、医療費の自己負担が軽減される仕組みとなっています。
利用までの流れ
訪問看護を実際に利用してみたいと考えた場合、どのような手順で進むのかをご案内します。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう まずは、通院されているクリニックや病院の主治医に「ご自宅での生活に不安があるため、訪問看護を利用してみたい」とご相談ください。うまく話せなくても大丈夫です。医師が必要と判断した場合、訪問看護ステーション宛てに「精神科訪問看護指示書」という書類が発行されます。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討している訪問看護ステーションに、電話やメールで連絡をとります。ご本人からだけでなく、ご家族からのご相談やお問い合わせも、標準的な使い方ですのでご安心ください。
- 面談・契約 訪問看護ステーションのスタッフが、ご本人やご家族と面談を行います。現在の状況や希望を丁寧にお聞きし、サービスの内容や料金について説明が行われます。一度で決めなくても構いません。疑問があれば何度でも質問していただけます。内容にご納得いただいたうえで、契約を取り交わします。
- 訪問開始 契約後、医師の指示書や事前の話し合いに基づいた計画に沿って、スタッフが定期的にご自宅へお伺いし、サポートを開始します。もし試してみて合わないと感じたら、また別の方法を相談することも可能です。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして、精神科に特化した訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには、精神科看護の分野で専門的な知識と経験を持つ精神科認定看護師が在籍しております。アルコール依存症の療養に伴うご本人の苦悩や、ご家族の深い疲労に寄り添い、少しでもご自宅での生活が穏やかなものになるよう、ご家庭それぞれの状況に合わせたサポートを一緒に考えていきます。
お酒の問題でご自宅での対応に限界を感じているとき、決してご家族だけで抱え込む必要はありません。外部の支援を使うことは、現状を変えるための大切な一歩となります。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にこちらからご連絡ください。
参照:MSDマニュアル