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「一人暮らしをはじめたいけれど、自分だけでうまく生活していけるだろうか」「実家を出て離れて暮らす家族が、毎日を安全に過ごせているか心配だ」――統合失調症の診断を受け、自立に向けた一歩を検討しているご本人や、それを見守るご家族のなかには、このような思いを抱えながら情報を探している方がいらっしゃるかもしれません。
一人暮らしには誰しも不安を伴うものであり、最初からすべてを自分だけで完璧にこなす必要はありません。情報を調べ、課題を整理しようとしている今の段階が、生活を安定させるための大きな一歩になり得ます。この記事では、統合失調症を抱えながらの一人暮らしにおいて直面しやすい課題や、日常生活を継続していくために活用できる在宅サポートの選択肢を整理して解説します。困った時に周囲の助けを借りることも、自立した生活の一部です。これからの生活設計や、無理のない支援体制を整えるための参考としてご一読ください。
統合失調症と一人暮らし:不安に思うのはなぜか
統合失調症という病気と付き合いながら一人暮らしを営むにあたり、ご本人や周囲が不安を抱くのは決して不自然なことではありません。同居する家族がいない環境では、これまで周囲がさりげなく担っていたサポートがなくなるため、いくつかの生活面・健康面での課題に直面しやすくなるとされています。
まず挙げられるのが、服薬や通院の管理をすべて一人で行わなければならないという点です。調子が良い時期が続くと「もう薬を飲まなくても大丈夫ではないか」と自己判断してしまったり、日々の忙しさのなかでつい飲み忘れてしまったりすることが起こりやすくなります。
次に、生活リズムの乱れが挙げられます。就寝や起床の時間、食事のタイミングなどを注意してくれる人がいないため、夜更かしが続いて昼夜逆転の生活になってしまったり、食事が簡素なものに偏り、栄養バランスが崩れてしまったりするケースが見られます。
さらに、社会的な孤立や孤独感も無視できない課題です。日中、誰とも会話をせずに過ごす時間が増えると、ふとした不安や考え込みが肥大化しやすくなる性質があります。また、こうした環境下では、症状が徐々に悪化し始めているサインに自分自身で気づきにくく、発見が遅れてしまうことが懸念されます。
しかし、これらの課題があるからといって、「一人暮らしは無理だ」と一概に決めつける必要はありません。福祉サービスや在宅での専門的なサポートを適切に組み合わせ、活用していくことによって、生活のハードルを下げ、安定した一人暮らしを維持していくための基盤を作ることができる場合があるとされています。
一人暮らしを安定させるための基本
一人暮らしという新しい環境において、体調を大きく崩さずに毎日を過ごしていくためには、生活の土台となるいくつかの基本を意識することが推奨されています。
服薬・通院を継続する
統合失調症の在宅療養において、重要視されるのが治療の継続です。医師から処方されたお薬を指示通りに飲み続けることは、脳の働きを安定させ、症状の再発リスクを抑えるために有効な手段であるとされています。自分自身の判断でお薬を中断することは体調の変化を招く場合があるとされているため、毎日の服薬習慣を維持することが大切です。
生活リズムを整える
一日のスケジュールを一定に保つことは、精神的な安定を維持するための要素と考えられています。毎朝同じような時間に起床し、夜は十分な睡眠時間を確保できるよう就寝時間を整えることで、自律神経のバランスが保たれやすくなると言われています。三食すべてを完璧に手作りする必要はありません。決まった時間帯に何らかの食事を摂る習慣をつけるだけでも、生活のメリハリが生まれやすくなります。
困ったときに相談できる人・場所を確保する
一人暮らしだからといって、すべての問題を自分一人の力だけで解決しようとする必要はありません。生活の中での小さなお困りごとや不安が生じた際に、すぐに連絡を入れたり相談できたりする人や場所を、事前に確保しておくことが重要です。「何に困っているかうまく説明できない」という場合でも、まずは支援センターなどの窓口に電話をしてみるだけで十分な一歩となります。
在宅生活を支える支援・制度
一人暮らしをはじめる、あるいは続けていくにあたり、ご本人や家族の負担を軽減するために活用できる公的な支援や制度、福祉サービスが複数存在します。
障害福祉サービスの一つとして、一人暮らしの精神障害のある方を対象に、定期的な訪問による生活相談や家事のアドバイスなどを行う「自立生活援助」というサービスがあります。また、福祉サービスの利用計画を一緒に作成し、生活全般の窓口となってくれる「相談支援事業所」なども、地域生活を組み立てる上で頼り先となります。
経済的な不安を和らげるための仕組みとしては、生活費の補助として機能する場合がある生活保護制度や、障害年金といった制度が挙げられます。ただし、これらの各種支援制度や福祉サービスには、それぞれの自治体が設定している細かな利用条件や申請手続きが存在します。ご自身で細部まですべてを把握しておく必要はなく、まずは窓口に問い合わせてみることで、状況を整理できる場合があります。特に障害年金の申請等については、お住まいの地域の福祉担当窓口や社会保険労務士といった専門家へ直接ご相談いただくことが推奨されます。
また、完全に一人で暮らすことへの不安が強い場合は、専門の職員が配置された「グループホーム(共同生活援助)」という選択肢を検討することも一つの方法です。状況に応じて支援の形を見直すことも可能です。
関連記事:統合失調症の方が受けられる福祉サービスは?医療・生活・仕事を支える制度を紹介
精神科訪問看護が一人暮らしを支える理由
数ある在宅支援のなかでも、医療的な視点と生活の支援を組み合わせて、一人暮らしの日常生活に直接的に関わることができる選択肢として「精神科訪問看護」があります。訪問看護の活用が、一人で暮らす方の生活の安定に寄与する背景にはいくつかの理由があります。
服薬管理と体調の定期確認
看護師などの専門スタッフが定期的にご自宅を訪問することで、お薬が正しくセットされているか、飲み忘れがないかといった服薬状況を確認します。また、睡眠状態や気分の波など日々の体調変化について話を伺い、客観的にチェックします。これにより、お薬の飲み忘れを防ぎ、体調の小さな変化を早い段階で捉えることにつながります。
生活リズムの立て直し支援
一人暮らしで乱れがちになる生活習慣に対し、具体的なアドバイスや工夫を提案します。部屋の片付けや食事が滞っている場合に、どのような手順で進めれば負担が少ないかを一緒に考えます。訪問日そのものが一日の予定における一つの目安となり、生活に適度なメリハリを作る役割を果たしてくれます。
孤立を防ぐ定期的な関わり
定期的かつ継続的にスタッフがご自宅を訪れることは、「社会的な孤立」や「孤独感」を軽減する一因になり得ます。他者と対話し、自身の状態や最近の出来事について話す機会を持つこと自体が、精神的な安心感をもたらすきっかけとなります。
緊急時の医療機関連携
ご本人の状態が著しく変化している場合や、症状の再発が疑われるような状況が見られた場合、訪問看護スタッフから主治医や医療機関へ連絡を入れ、状況を報告する体制をとります。日頃から本人の状態を把握している専門職がパイプ役となることで、適切な医療的措置へのスムーズな連携が図りやすくなります。
家族の不安を軽減するために
ご本人が一人暮らしを希望している、あるいは既に生活を始めている場合でも、離れて暮らすご家族にとっては「体調を崩していないか」「孤立していないか」という心配が尽きないものです。
このような場面において、精神科訪問看護はご家族にとっても有益な役割を果たす場合があります。定期的に専門スタッフがご自宅を訪問し、本人の生活の様子や健康状態を確認するため、離れているご家族に代わって「見守りの目」としての機能を担う場合があるからです。
訪問看護の利用にあたっては、ご本人からの問い合わせだけでなく、本人の在宅生活を心配されているご家族からのご相談をお受けする場合もあります。ご本人もご家族も、最初から完璧な状態を目指す必要はありません。第三者の支援を活用しながら、少しずつ生活の形を作っていくことが一つの方法とされています。
費用と使える制度
精神科訪問看護を利用する際の費用については、基本的には各種医療保険が適用される仕組みとなっています。 また、精神疾患の治療のために継続的な通院や在宅ケアが必要な方を対象とした「自立支援医療(精神通院医療)」という公的制度があります。この制度の適用を合わせて受けた場合、医療費や訪問看護の利用料金に対する自己負担の割合が軽減される場合があります。
自立支援医療の申請条件や手続きが分からなくても問題ありません。詳しくはご相談ください。
関連記事:統合失調症と訪問看護|受けられる支援内容・家族の負担軽減・利用方法をわかりやすく解説
利用開始までの流れ
精神科訪問看護を利用し始めるまでの一般的な流れは、以下のような手順で進めていきます。
- 主治医に相談し、訪問看護指示書を発行してもらう 訪問看護を開始するためには、現在通院している医療機関の主治医が記入した「精神科訪問看護指示書」が必須となります。まずは医師へ、一人暮らしのサポートとして訪問看護を利用したい旨をご相談ください。
- 訪問看護ステーションに問い合わせる 利用を検討しているステーションへ連絡を入れます。この問い合わせは、ご本人からだけでなく、離れて暮らすご家族やパートナー、地域の相談支援専門員などを経由して行うことも可能です。初回は「まずは話を聞いてみるだけ」のご相談でも構いません。
- 面談・契約 訪問看護のスタッフが事前面談を行い、具体的な訪問の頻度やサポートの内容などについて説明を行います。内容に納得いただいた段階で、利用のための契約を結びます。
- 訪問看護の開始 主治医からの指示書の内容と、面談で確認した計画に基づいて、実際の自宅訪問サービスが開始されます。
まずは相談だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
精神科訪問看護ステーション ラララについて
精神科訪問看護ステーション ラララは、福岡市全域を対象エリアとして訪問看護サービスを提供しています。
当ステーションには精神科認定看護師が在籍しており、精神疾患を抱えながら自立した一人暮らしを目指す方々や、離れた場所から見守っていらっしゃるご家族を支えるための療養生活支援を行っています。
すべてを一人で抱え込み、完璧な生活を送ろうとする必要はありません。どこかでつまずいたり迷ったりした時でも、何度でも支援を見直しながら進めていく選択肢があります。地域のさまざまな支援の手を借りながら、ご自身のペースで在宅生活を維持していくための一つの方法として、お役立ていただければと思います。
精神科訪問看護ステーション ラララでは、皆様の疑問や不安に丁寧にお答えします。まずは相談だけでも構いません。こちらからお問い合わせください。
参照:厚生労働省「統合失調症」